Q1.スケーリングを早くするコツはありますか?
A1.経験を積むことが一番ですが、超音波とハンドでは異なるポイントがあります。
【超音波スケーラーの場合】
必ずしも全顎に当てる必要はありません。
何を目的として使用しているのかをはっきりとさせましょう。
①歯石除去
②イリゲーション
③キャビテーション効果によるデブライドメント
この 3 つが超音波スケーラーの使用目的です。
歯周ポケットが 3mm 以下で、BOP も歯石もなければ、当てる必要はありません。
選択的に使用することによって、無駄な時間を省けますし、患者さんへのダメージも避けることができます。
【ハンドスケーラーの場合】
シャープニングされていることが、最大の時間短縮になります。
正しくシャープニングされた、切れ味の良いスケーラーを使用することによって、縁上も縁下も一撃での歯石除去が可能になります。
シャープニングされていないスケーラーを使用すると、表面しか削れないため、時間がかかってしまいます。
また、側方圧も余計にかかり、術者・患者共に負担が大きくなります。
ハンドの場合は、エッジがかかる方向に動かす必要があるため、コツを掴むには訓練が必要です。
シャープニングは、学校で習っただけで出来るようになる衛生士はほとんどいません。
何年も経験のある衛生士でさえ、シャープニングは出来ない人の方が多いです。
シャープニングは、研修を受けるか、できる先輩に教えてもらい、練習すれば必ず誰でも出来るようになります。
スケーラーの操作方法も、研修などで一度きちんと習うと、コツが掴めるかと思います。
Q2.SRP 後、メインテナンスに移行する患者さんへの説明方法を教えてください
A2.まずは、SRP 前後の歯周検査の結果などを用いて、こんなに良くなった!ということを、患者さんに認識してもらうことが大切です。
そして、SRP で歯肉が改善したのであれば、それを維持するためのセルフケアと、定期的なメインテナンスの重要性を、患者さんにしっかりと理解してもらうこと。
TBI を行うときにも重要なことですが、患者さんに「脅し」の言葉を使うことは、危機感のない患者さんには効果があります。
脅しの言葉とは、「セルフケアを怠ったり、メインテナンスを受けなければ、悪化して抜歯になることもありますよ」というような言葉。
ただし、脅しの効果は一瞬だけです。
継続してもらうためには、「これをすると、こんなにいいことがある!」という、ポジティブな言葉です。
なので、セルフケアやメインテナンスを継続すると、どれだけいいことがあるのかを、しっかりと伝えてあげてください。
また、患者さんが気を緩めすぎないように、時には脅しの言葉を入れつつ、メインテナンスに来てくれていることが素晴らしい!と毎回褒めてあげてください。
それが患者さんのモチベーションに繋がります。
Q3.着色除去が大変です。着色を付きにくくするにはどうしたら良いでしょうか?
A3.着色の付きやすさには個人差がありますが、歯の表面に傷があると付きやすくなります。
そのため、歯科医院で着色除去をするとき、粗い研磨剤を使用して、そこで終了してしまうと、傷だらけで帰すようなものなので、さらに付きやすくなってしまいます。
【歯科医院で行う着色除去のポイント】
- 「ラバーカップ+粗い研磨剤」を使用して着色除去する場合、必ず、その下の粗さの研磨剤で二次研磨を行うこと
- 時間があれば、つや出し等の仕上げ磨きまで行うことで、歯の表面がツルツルになり、着色が付きにくくなる
- ポリッシングブラシは、基本的には咬合面しか使用しないこと(歯面に傷が付くため)
- リナメル等の、ナノ粒子ハイドロキシアパタイトのペーストは、エナメル質の傷を修復し、着色を付きにくくしてくれる働きがある
- エアフロー等を使用する場合は、粒子の細かいパウダーを用いるか、炭酸水素ナトリウム等の粗めのパウダーを用いた後は、ラバーカップで仕上げ磨きを行う
【セルフケアで気をつけてもらうこと】
- 週に1,2回は清掃剤(研磨剤)入りの歯磨剤を使用してもらう(使用頻度は着色の付きやすさによって決める)
- 摩耗や知覚過敏がある場合は、研磨剤入りの歯磨剤の頻度を少なくして、アパガードリナメル等の、ナノ粒子ハイドロキシアパタイト入りのホームケアペーストを使用してもらう
- 上記の歯磨剤 2 種類を併用するのも有効(例:朝は清掃剤入り、夜はナノ粒子入りを使用するなど)
- お茶やコーヒー以外にも、ポリフェノールが入った飲食物でも着色が付きやすいので、なるべく避ける
- イソジンの使用に注意する(日常的に使っていると、かなり着色が付きます)
Q4.患者さんから「口臭が気になる」と相談を受けました。しかし実際には口臭を感じません。どのような返答をするのが 1 番良いのでしょうか?
A4.口臭については、まずは「状態」と「原因」を特定していきましょう。
状態とは、
●実際に口臭がある or ない
●自覚がある or ない
それぞれの状態によって、対応が異なります。
今回の相談では、【口臭がない/自覚がある】に当てはまります。
では、この場合の「原因」を特定していきましょう。
①いつ口臭が気になるのか
・寝起きの時ではないか?
起床時は誰でも口臭が感じられる時間帯です。このときだけ気になるのであれば、問題はないことを伝えましょう。
・食事内容によるものではないか?
ニンニクやネギなどを食べた後など、その食材によるものではないかを確認してみましょう。
②常に気になる場合
口臭を他人から指摘されたことがないのであれば、
・精神的なもの
・鼻の疾患(蓄膿症など)
③ニオイの種類
・歯周病や清掃不良など、口腔内に原因があるものか?
・胃や糖尿病など、内科的疾患によるものか?
※今回は他者が感じるニオイはないため、特定は困難
今回の場合は、結論として「口臭はない」ということを、どのように患者さんに理解してもらうかが問題です。
「口臭はないから大丈夫です」と伝えるだけでなく、患者さんの話を聞きながら、一緒に原因を探り、そしてアドバイスをしてあげる方が、患者さんは納得できます。
それでも、どうしても気になるような場合は、口臭外来などで口臭を数値化し、患者さんが客観的に判断できる状況を作ってあげましょう。
Q5.歯頸部や隣接面の着色をうまく取る方法を教えてください
A5.着色除去の方法は、
●研磨剤(粗めの粒子で汚れを落とすタイプと、汚れを浮かせて落とすタイプがあり、使用方法や適応部位が異なります)
●エアフロー等の歯面清掃用パウダー
●スケーラー、短針、エキスカ等の器具
これらを駆使して落としていきます。
歯頸部は、歯肉退縮や知覚過敏が起こりやすいため、汚れを浮かせて落とすタイプの研磨剤や、柔らかいパウダーを使用するのが好ましいです。
隣接面は、パウダーを使用するのが最も効率的です。また、フロス+研磨剤を使用して除去することも可能です。
【研磨剤を使用する際の注意点】
・しっかりと歯面を乾燥させて、研磨剤が唾液で薄まらないようにする
・粗めの研磨剤使用後は、必ず仕上げ磨きまで行うこと
※粗めの研磨剤のみで終了してしまうと、歯面に傷がついた状態のため、着色がつきやすくなってしまいます。
【着色除去のポイント】
①大まかな着色は、研磨剤、パウダーを用いて除去
②落とせなかった細かい着色は、スケーラー、短針、エキスカ等を用いて除去
また、着色除去用のホワイトポイントもあります。歯面を傷つけることなく使用でき、先の尖った形のものは、隣接面や細かい着色除去に適しています。
Q6.手用歯ブラシよりも電動歯ブラシの方が良いのでしょうか?
A6.電動歯ブラシは、良い悪いというよりも、向き不向きがあると思います。
【電動歯ブラシの良い点】
・手が疲れない
・歯面のつるつる感
・時間の調整ができる
(日本人の手磨きの平均は 24 秒と言われています。電動歯ブラシの場合、2 分間で 1 クールだったりするため、必然的に時間がかけられます)
・ブラッシング圧が調整できる
(メーカーによって、圧が強いと振動で教えてくれるタイプと、勝手に圧を調整してくれるものがあります)
【電動歯ブラシが向いている患者さん】
・不器用な方や、手の不自由な方
・せっかちな方
・ブラッシング圧が強い方
・器械好きな方
【注意点】
普通の歯ブラシの代わりが電動歯ブラシです。
決して万能ではないため、当然ですが、歯間ブラシ、フロス、ワンタフトブラシ等の併用が必要です。
CM などで、歯間の汚れまで落ちると勘違いしている患者さんもいるため、誤解させないようにしましょう。
メーカーによって、毛先の形、動き方が異なります。
そのため、当て方もそれぞれ異なります。
電動歯ブラシ使用の際は、当て方の指導を必ず行いましょう。
詳しくは、それぞれのメーカーにお問い合わせ、または HP 等で調べてみてください。
Q7.SRP が苦手です。どうしたら上手くなれるのでしょうか?
A7.SRP を上手く行うには、
●シャープニングが確実に出来ること
シャープニングの有無によって、エッジのかかり方は全く異なります
●探知が出来るようになること
歯石の有無はもちろん、粗造な根面の状態と、きれいな根面の状態が、触ってわかるようになること。そのためには、先輩衛生士の SRP 前後の縁下を触らせてもらったり、抜去歯牙を用いたりして、感覚で覚えていきましょう。
●スケーラーの刃先と根面のイメージが出来るようになること
うまくエッジがかからない理由として、第一シャンクが歯軸と平行になっていない。
または、刃先が根面から離れていることが考えられます。
顎模型(クリア色の歯肉のもの)を使用することで、根面の形態や、刃先が離れていないかを確認するのもオススメです。
基本的に縁下は見えないものなので、解剖学の知識と、感覚やイメージ力を上げることが大切です。
Q8.塩で歯磨きすると言う高齢の患者さんには、どのように対処すればよいでしょうか?
A8.塩には歯肉の引き締め効果(収れん作用)がありますが、それだけです。
決してプラーク除去効果が高まるわけでも、歯周病に良いというわけでもありません。
また、フッ素を使わないことでカリエスリスクが高まります。
ということをお伝えしましょう。
ただ、高齢者の中には、これまで一度も虫歯にもならず、歯周病も進行していないという方もいます。
そのような方は、今後の人生もそのまま乗り切れる可能性が高いため、無理に塩をやめさせる必要はありません。(高血圧などには注意ですが)
どうしても塩で磨きたいけど虫歯もある。という方には、フッ素洗口液を併用してもらいましょう。
Q9.フッ素について、副作用や害はあるのでしょうか?
A9.明らかに多量(6 歳児なら歯磨剤を 1.7 本一気飲みするほどの量)のフッ素を取り入れなければ、害よりも利の方が上回ると考えられます。
ネット上や、フッ素の害について書かれている本などには、脳への影響や、発がん性などについても取り上げられていたりします。
その根拠となるデータも掲載されているようなのですが、それを立証する論文は見つからなかったり、日本ではあり得ない環境下での実験結果だったようです。副作用や害については、フッ素だけでなく、全ての薬や食品にも当てはまります。
それらには適切な使用量(摂取量)があり、多量に摂取することで体に害を及ぼす危険性がありますよね?
フッ素にも同じことが言えますので、適切な量を守って使用しているのであれば、問題ないと考えられます。
Q10.患者さんでフッ素の使用を嫌がる方がいるのですが、どうすればよいでしょうか?
また、フッ素以外の案があれば教えてください。
A10.フッ素にまつわるネガティブな情報を信じている場合、その考えを変えることは難しいかもしれません。
それでも出来る限りアプローチをする場合、『カリオグラム』というむし歯リスクを視覚化するソフトがお勧めです。(無料でダウンロードできますが、唾液検査を実施していないと正確なリスクを出すことは困難です)
このカリオグラムで、フッ素を使用した場合と、未使用の場合の『う蝕を避ける可能性』の違いを見てもらいます。
数字で大きな差が付くため、フッ素がむし歯予防に大きな効果があることを客観的に理解してもらうことができます。
それでもフッ素を使用したくない場合は、フッ素以外の方法を提案します。
その際、カリオグラムや CAMBRA®を用いると、フッ素未使用の場合、何をすれば『う蝕を避ける可能性』が上がるのか?シーソーが防御の方に傾くのか?といった具体的にやるべきことがわかります。
う蝕は多因子で起こるものなので、フッ素未使用の場合は、食習慣やプラーク量などの調整により、バランスを取っていく必要があると思います。
また、MI ペーストも再石灰化の促進になりますので、フッ素の代わりに使用してもらうこともあります。(乳製品アレルギー不可)
Q11.プロービングを嫌がる患者さんがいます。どうすればいいのでしょうか?
A11.炎症があり、プロービングが痛くて嫌がる患者さんの場合、炎症が治ると痛みも軽減します。その場合は、まずは炎症があるから痛いことを伝えましょう。
もし、患者さんからプロービングを何度もされたくないと言われた場合、プロービングの必要性を理解していないのだと思います。毎回必ずプロービングの結果を見せて、現状を説明しましょう。
例えば、糖尿病患者さんの場合、注射が苦手でも血液検査を拒否する方はいないでしょう。それは正しい数値を出して、それに見合う治療が必要だと理解しているから。
プロービングは歯周病を数値化するために必要な検査です。まずは、そのことを理解してもらいましょう。
そして、SC や SRP でこの数値が改善する可能性があることを伝えた上で処置を実施すると、患者さんも結果が知りたいので、検査に協力的になって下さると思います。
Q12.TBI をしても改善しない患者さんを SRP に進めて良いのでしょうか?
A12.なぜ改善しないのか?を明確にしましょう。
『磨く気がない』のか、『磨く技術がない』のか。
磨く気がない人に磨き方を教えても意味がないので、まずは「磨きたい!」という気持ちに持っていく必要があります。
磨く技術がない人には、根気強く指導していきます。時間はかかっても、やる気さえあれば必ず上達します。
手が不自由だったり、高齢だったりするのであれば、大きめヘッドや電動歯ブラシなど、道具を工夫したり、洗口液やキシリトールを併用したりしながら、PCR が完全に良くならなくても SRP を進めていき、なるべく頻繁に PMTC などのプロフェッショナルケアを行って安定させていきましょう